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代表/平本あきお
平本コラム「アメリカ体験記 2」

「あっ、車がない!!」いつもとめてある場所に車がない。
その場には、粉々に砕けたウィンドガラスらしき破片が散らばっている。

当時、すし屋のバイトだけで、授業料と生活費のすべてをまかなっていた私にとって、その車は通勤通学の交通手段であるばかりでなく、日本帰国後の生活資金でもあった(当時、売れば6000ドル、約72万円相当。それが盗まれた。実際、去年の9月に帰国する際、全財産が10万ほどしかなかった)。

私の生活事情を知っている友人、クラスメイト、バイト仲間、インターン先の先輩や同僚、ありとあらゆる人が、なんとか私を勇気づけようとしてくれた。 入れ替わり立ち代わり、言葉をかけられるうちに、それらは次の5つのパターンに分類されることに気がついた。

「かわいそうに、これから大変だね」(誠意を示す同情)、
「盗難保険に入っていればよかったのに。どうしてハンドルのロックしてなかったの?」(過去への原因追求)、
「きっと、すぐ戻ってくるよ。警察が見つけてくれるよ」(根拠のない楽天)、
「命があるだけでもましさ。事故って死ぬより、盗まれる方がまし」(比較を使った慰め)、
「実は私も昔盗まれて、私のときは、・・・」(話を自分に持っていく)

みんなの思いやりは分かるものの、実際、どれもあまり励ましにはならなかった。
解決志向アドレリアンであると信じている私は、真っ先に自分自身に次のように問いかけた。

「まず、具体的に何が困るだろう?現状でどう対応できるだろう?」(現状からの解決志向)。

車がないことで具体的に困ることをすべて紙に書き出す。
そのうち緊急性や必要性の低いもの(遊びや娯楽など)は、すべて消去する。
不可欠なことに関しては、電車やバスを使う、特定の日だけ友人に車を借りる、予定を延期するなど、対応策を見つける。 車が戻らないことを想定し、資金なしで日本に帰国後、どう生計を立て始めるかを検討する。

盗難の報告など、車返還のための手続きをとる。
とはいえ、正直、かなりショックだったけれど。

読者のみなさんは、人が災難に直面したとき、どう対応されるだろうか?
自分ならこう言うと思っていても、案外、つい実際は違うことを言ってしまうこともある。

この6つのパターンを飛び越えて、何よりも私を元気づけたのは、その当時、付き合っていた彼女であった。 シカゴでヘアモデルだったとはいえ、普段は男勝りで、全く化粧っけもない彼女が、車の盗難直後、「一秒でもはやく会いたいから、何もしないですぐかけつけようか? それとも、ちゃんとお化粧してきれいにして、
あきおさんに会おうか?迷った」という。 「でっ、どっちにしたの?」、「半分ずつ・・・」。

息を切らせながら、走ってきた彼女のほんのりとしたピンクの頬と控えめに赤い唇に、何よりも、誰よりも、私はいやされた。